水を飲み過ぎると中毒になり、絶命することをご存知でしょうか?
2012年には宮城県の病院で事故が起きており、アメリカでも2ガロン(7.6リットル)の水を飲んだ学生が亡くなっています。
これは、体内にあるナトリウムが急激に減ることで起こってしまう事故。
では、Cannabisを吸いすぎて亡くなってしまうこともあるのでしょうか?
理論上、Cannabisの致死量は1,500ポンドを15分内に吸い切ることです。1,500ポンドとは、約680kgに相当します。
つまり、事実上中毒症状で絶命することは考えられません。
但し、Cannabisの吸いすぎは毒になることが判明してきました。
全世界的に大麻の合法化や非犯罪化が進んで、その使用に伴うさまざまな健康問題も増えています。
今回議題に挙げるその症状は、精神疾患ではありません。
Cannabinoid Hyperemesis Syndorome / CHS・カンナビノイドハイパーメシスシンドローム。
Cannabisの長期使用により発症することがあり、その症状は熱・吐き気・嘔吐・腹痛などが主です。
放っておくと、合併症を併発することもあります。
CHSの症状から救急搬送され、電解質不足になったことで処置が間に合わず絶命したとの情報も。
加えてTHC様の合成カンナビノイドも、日本同様世界中で流行。
症状が出る原因を究明すると、陶酔作用を有する合成カンナビノイドでも同様の症状が発生する可能性が高いでしょう。
あなたがCannabisや合成カンナビノイドの製品を摂取する機会が多ければ、症状が出た時に対策を知っておくことが重要です。
このブログでは、カンナビノイドハイパーメシスシンドロームの特徴や対処法について説明します。
カンナビノイドハイパーメシスシンドロームとは
CHS カンナビノイドハイパーメシスシンドローム(Cannabinoid Hyperemesis Syndrome)は、長期に渡るCannabisの使用によって起こる症状のことです。
全世界で2億人のCannabisユーザーがいるとされますが、そのうちの5〜10%程度の1,000万人以上がCHSであるとされています。
ちなみに、CBD / CBN / CBG利用だけでのCHS報告は見当たりません。
主にTHCによるものや、サイコアクティブと言われる陶酔作用が起きる合成カンナビノイドによるものだとお考えください。
陶酔作用が起きる理由については、THCとは?と題した記事をご覧ください。
THCとは?テトラヒドロカンナビノールを解説
CBDと同じように大麻草から抽出される量の多いカンナビノイド、THC。 嗜好品としても世界で2億人が使用するCannabisの主要成分であり、医療でも使われていることが多いものの日本では2022年9月 ...
THCを過剰摂取することにより、体内のエンドカンナビノイドへ良い影響を与えなくなってしまうことで、特徴的な幾つかの症状が出ます。
最も代表的な症状は、朝起きた時に吐き気を感じるようになることです。
症状の特徴
カンナビノイドハイパーメシスシンドロームの症状、その特徴的な状態は
- 「慢性的な吐き気」
- 「体が熱く感じる」
- 「反復性の嘔吐」
- 「腹痛」
Hyperemesisは、英語で「過度な吐き気 / 悪阻」等の意味を持ってます。
また、CHSの患者は症状が出るとシャワーを浴びることで、各症状を軽減。
熱いシャワーを浴びる事でそれぞれの症状が軽減される事が多数報告されていますが、体に熱を感じる方の中には冷たいシャワーを浴びる方も少なくないようです。
加えて、実際に嘔吐が繰り返される症状。
腹痛が伴う。以上主な症状は4つ、報告されています。
これらの症状が、複数同時に出る場合は特に注意が必要です。
合併症
吐き気を伴ったり、実際に嘔吐することで脱水症状や栄養不足になることがあります。
また激しい嘔吐を繰り返すことで、誤嚥性肺炎などの報告。
食道の壁が裂けてしまう、ブールハーベ症候群と呼ばれる重症になることも。
CHSは体内で、どのような問題が発生して引き起こされるのでしょうか?
CHSの原因
カンナビノイドハイパーメシスシンドロームの原因は、CB1受容体に直接作用するTHCが体内で恒常性(ホメオスタシス)を維持出来ない状態にしてしまうためです。
それには大きく二つの理由があると考えられます。
吐き気を催し、嘔吐をしてしまう
CHSはTHCが体内に入ることで、吐き気を催したり嘔吐してしまう症状が発現。
本来THCには吐き気を止める作用があり、医療的にも使われています。
まずTHCが吐き気を止める理由として、CB1受容体への結合する特性があります。
消化管にも、THCなどが結合するCB1受容体が多数存在するためです。
THCを摂取しない方でも、CB1受容体に働きかけるエンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)も、吐き気を止める働きがあると考えられています。
さらにCB1受容体の活性化は、食道括約筋にも影響を及ぼすことがわかっています。
食道括約筋は、食道から胃に食べ物を送り込む堅い筋肉の帯です。
吐き気止めとして使われる場合、CB1受容体の活性化に伴う食欲括約筋への働きで、吐き気が止まります。
ところがCHSの場合には、コレと全く逆の作用が働いて吐き気を伴うようになるようです。
THCの入ったCannabisや陶酔作用の強い合成カンナビノイドを長期にわたって使用すると、影響を受ける分子の反応方法が変化。
CHSの症状が引き起こされると考えられています。
CBNも微弱にCB1受容体へ直接作用するので、毎日大量摂取するような方がもしいれば気を付けた方がいいでしょう。
他にも見えない大きな原因が特定されています。
変異遺伝子
もう一つの原因として、変異遺伝子を持っている人はCHSに罹りやすい事が判明しています。
著名人の中には1日何グラムお吸いですか?という人もいますが、とても健康そうです。(Snoop Doggは1日に200g以上吸引する!)
この方々はどうしてCHSにならないのか?
2022年に行われたゲノム検査(遺伝子レベルの検査)では、CHSに罹患する人について遺伝子異常の割合を算出。
結果、遺伝子異常が認められる場合とそうではない場合で、罹患率で5〜12倍の開きがありました。
一個人が遺伝子を調べるというのは現実的ではないので、誰がCHSになるかは神のみぞ知ると言っていいでしょう。
もし、CHSに罹患してしまったらどのような対処法が有効なのでしょうか?
対処法
CHSの最適な対処法は、使用をやめることです。
THCや合成カンナビノイドが体内に蓄積することを防ぎ、症状の改善が出来ます。
症状の重さが使用頻度や遺伝子レベルで異なるため、長期間の使用停止が必要な場合も。
専門家がいる場合にはどのような相談をすればいいのでしょうか?
医療的な対応
一部の国や地域では、医療機関等での措置も可能です。
残念ながら日本の場合には、(合成カンナビノイドのみの利用であっても)「Cannabisを利用している。」と通報されてしまう可能性も否めません。
予め、理解と知識のある医院を知っておくのも良いでしょう。
欧米など合法地域での病院で治療する場合、症状を一時的に改善する薬(抗精神薬 / β遮断薬 / 制吐薬 等)を使用することもあります。
いずれにしても、最終的な解決方法はCannabisや合成カンナビノイドの使用を止めること。
本来強い依存がある場合Cannabisに限らず、専門家との二人三脚が理想です。
医師やカウンセラーがいる場合には、メンタルケアも含めて対応することで29%が半年間使用をストップ。
但し、使用を再開した人の70%は以前と同じ頻度で利用してしまっています。
しかし、一人で6ヶ月間辞め続けることが出来る割合はわずか8%です。(Cannabis禁煙に対する障壁 2018年より)
医師と相談できない場合はどうすればいいのでしょうか?
より確実に止める方法のひとつは、CannabisやTHCの特徴を正しく知る事です。(合成カンナビノイドは不明ですが、知っておくことは有利に働きます。)
Cannabisをお好きな人でも安全性100%の誤認識、依存性が全くないと誤解している場合があります。
事実上致死量がないこと等が、拡大解釈されているようです。
- 大麻使用障害:30%(18歳未満は確率が数倍)
- 依存度は9%
- CHS割合は6%前後
若年層(25歳以下)に見られることが多く、人間関係・家族との問題、罪悪感等による自尊心の低下、経済的困難、生産性の低下、睡眠への悪影響、記憶力低下等が挙げられます。
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生活の見直し
生活習慣の見直しも重要です。
健康的な食事・十分な睡眠・ストレスの管理などは、CHSの予防に役立ちます。
あらかじめ、周囲の人々に理解と支援を求めることも大切。
日本では利用者や理解者が圧倒的に少ないため困難な道のりと思われますが、経験上パートナーや家族にずっと隠し続けられる人は皆無です。
緊急的な対応
CHSとの名前がついたのは2004年頃と考えられます。
それまでにも常習的にCannabisを使う方で、吐き気や熱を出した人がシャワーを浴びたり入浴することで症状を軽減されたことが判明していました。
今では、冷水シャワーを浴びるのも効果的であるとの報告もあります。
お風呂がある場合には、ぬるま湯に浸かるのも推奨です。
なぜ症状が和らぐのか
体が熱く感じるという症状は、THC等がCB1受容体を経由してECSにより脳の温度調節中枢に影響を与えるからです。
ぬるま湯や冷水への入浴により、この「体が熱く感じる」という感覚を一時的に抑えることが出来ると考えられます。
まとめ
カンナビノイドハイパーメシスシンドロームは、長期のCannabis使用により罹患する症状として確認されています。
正確な罹患率はまだ不明ですが、毎日利用する5〜10%、世界で1,000万人以上が悩んでいるようです。(2022年北米での大規模調査では6%)
吐き気、嘔吐、腹痛、体が熱く感じるなどが主な症状。
あなたやあなたのご友人などがどうしても吐いてしまうような症状が出てしまう場合には、無理しない方がいいでしょう。
その理由はCB1受容体への過度な働きかけが原因と見られるため、同様の働きあるいはそれ以上の働きをする合成カンナビノイドも注意が必要です。
緊急的な対応で、シャワーやぬるま湯などへの入浴によって一時的に症状が和らぎます。
中長期的に、Cannabisの使用をやめることが最も効果的。
その他にも、健康的な生活習慣や医療的な対応に正しい知識で離れられるでしょう。
合併症の報告などもあるので、当てはまることがあれば使用をお控えください。
ご自身や、周りの大切な人がこの症状が出た場合に緩和出来ることを願っています。